タマスダレは、一斉に咲く白い花と細く棒状の葉が特徴的な、昔からあるなじみの花です。すっかり日本の風土に馴染んでいて、あちこちに植えられています。春にホームセンターで出回る、植えっ放し球根シリーズには、だいたい本種が含まれています。
基本情報
学名: | Zephyranthes candida |
和名: | タマスダレ<玉簾> 別名:レインリリー |
分類: | ヒガンバナ科 タマスダレ属 |
分布: | アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイのラプラタ川流域及びチリ、ペルー原産。 日本には明治時代初期の1870年頃渡来し、日本の風土にも良く適応し、人里周辺に 半野生化した群落が見られることがある。この種は観賞用として広く栽培されており、 多くの場所で帰化の報告がある(南アフリカ、インド亜大陸、ジンバブエ、セイシェル、 中国中部および南部、韓国、南星松島)、ブータン、ソロモン諸島、クイーンズランド、 ナウル、トンガ、ソシエテ諸島、マリアナ諸島、米国南東部(テキサスからノースカロ ライナまで) |
形態: | ヒガンバナ科(クロンキスト体系ではユリ科)タマスダレ属の球根草 葉は細長く棒状で、深い光沢のある緑を呈し、長さは20~30cm、幅は3mm程。 8月下旬に芽を出す花(北半球で繁殖時)は、最初は新葉に似るが、後に白い(時に ピンクがかった)花被片が直立して、真っ白な紙の束のようになる。葉のような 苞葉は1.8〜4cm程。花茎は長さ20~30cmで、先端に花径4~5cmの花が上向きに咲く。 花被片は6個、雄しべは長短3本ずつあり、柱頭は3裂する。花被片の内側は白色で、 外面基部は淡紅色を帯びる。日向~明るい半日蔭の、ある程度湿り気のある土壌で よく育つ。増殖は、分球か実生により行う。タマスダレは、種子をほとんど付けない 個体とよく付ける個体が存在する。 花期:夏~中秋(幅がある:安城では8~10月) |
生息環境: | 日当たりさえよければ、乾燥地〜湿地まで生息できる。 |
英名: | autumn zephyrlily, white windflower, white rain lily, fairy lily |
シノニム: | Amaryllis candida, Amaryllis nivea, Argyropsis candida 他多数 |
品種名: | - |
利用: | 観賞用として広く栽培されており、春先に球根が園芸店やホームセンターに出回る。 但し、全草が有毒なので取り扱い注意。症状:吐き気、嘔吐 毒成分:リコリン ( lycorine )等のアルカロイド成分 |
観察記録
安城市の田畑では、タマスダレやヒガンバナが、土手や畔の縁に沿って植栽されているのを、よく見かけます(写真1)。本種は、植えっ放しでよく育ち、花期は一斉に咲き、見応えがあるので、グランドカバーにうってつけだと思います。実際タマスダレは、定番のグランドカバー植物のようです。
タマスダレの葉は、細長い棒状で濃い艶のある緑色で、遠目にもそれと分かる特徴的な形をしています(写真2)。本種は暖地では常緑性で、花期初期の8月頃に生え代わり、花期終盤の10月初旬頃には完了します。葉は太くなり30cm程まで伸びて、以降の花は、葉に囲まれ目立ちません(写真2#1,4)。
タマスダレの花は、真っ白な花被片が6個、黄色の雄しべが6本、3裂した柱頭を持つと記載されます。安城でも、記載通りの目を引く配色で、土手や畦道によく咲いています(写真3#1~#6)。
タマスダレの花は、花期にポツポツと咲くのではなく、一定の周期で一斉開花を繰り返します。本種が、一斉開花を繰り返す様子について、みんなの趣味の園芸のそだレポに、よくまとまった記事があります。安城市のタマスダレも、花期に入るとこの傾向が見られます。
が、私の不見識の為、一斉開花の周期を意識した撮影が出来ませんでした。写真4では、8~10月(花期)で一斉開花が一回起こるように見えますが、実際は花期中に、3回ほど一斉開花がありました。一斉開花が起こる所以と思われる結実状況について、今年は結実した株が見つかりませんでした。
タマスダレの一斉開花について、今回観察できた事項は以下の通りでした。
- 先行してまばらに花が咲き、一斉開花に向けて蕾が多数立ち上がってくる(写真4#1)
- 次々立ち上がった蕾が一斉に開花する。その後も次々蕾が立ち上がり、この状態が一週間程続く(写真4#3)
- 一斉開花の終了後は、開花もまばらになり、10月に入ると葉が伸長して花に掛かる様になる(写真4#2)
考察
タマスダレは、畦道や土手でよく見かける草花です。園芸種と言うより、田舎の野草の風情で、各地にすっかり定着していると思います。普通過ぎて、写真だけ取って放置していましたが、調べてみると独特の生態を持つことが分かって面白かったです。
本種について一斉開花の後に、大量の結実があって然るべきだと思いますが、今年は結実した個体を発見出来ませんでした。本種は、個体により結実する/しないの差が激しい様なので、たまたま観察した範囲に、結実し易い個体が無かったのでしょうか?来年は、もう少し広範囲を観察したいです。
参考文献
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「“Zephyranthes candida” BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)2021年10月28日閲覧
- Wikipedia日本版、”タマスダレ” 2021年10月28日閲覧
- Wikipedia英語版、”Zephyranthes candida” 2021年10月28日閲覧
- ペリプラス株式会社「暮らし〜の」”タマスダレとは?植物としての特徴や育て方をご紹介!毒性はある?“ 2021年10月28日閲覧
- 厚生労働省ホームページ「自然毒のリスクプロファイル:高等植物:タマスダレ」2021年10月28日閲覧
- 園芸ネット株式会社「ngei.net」”玉簾・ゼフィランサスカンジダ ホワイトガーデンに” 2021年10月28日閲覧
- 株式会社NHK出版「みんなの趣味の園芸 そだレポ」”白く浮かぶ花、タマスダレ” 2021年10月28日閲覧
- 波田善夫(1997-)「植物雑学事典」岡山理科大学生物地球学部 “タマスダレ Zephyranthes candida Herb.” 2021年10月28日閲覧
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