路傍の花:マルバルコウ

マルバルコウアイキャッチ 草花

夏頃から通勤途中にある畑の畔に、鮮やかな赤が目を引く小花が、ずっと咲き続けており、前から気になっていました。先日確かめに行ってきたので、記事にまとめます。多分「ルコウソウ(Ipomoea quamoclit)」だと思っていたのですが、写真の通り、ノアサガオのような丸く平べったい葉が茂っていてびっくりしました(因みにルコウソウの葉は羽状で、草姿はずっと繊細な感じになります)調べたところ、本種は「マルバルコウ(Ipomoea coccinea)」と言い、北米原産でルコウソウに近縁な帰化植物でした。ルコウソウと同様、江戸時代に観賞用として導入され、その後、各地に帰化したようです。

基本情報

学名:Ipomoea coccinea
和名:マルバルコウ<丸葉縷紅> 別名:マルバルコウソウ
分類:ヒルガオ科 サツマイモ属
分布:北アメリカ原産の帰化植物。移入分布:本州中部以南に帰化している
形態:つる性の一年草で、左巻きにからみつき3mほどになる。葉は互生し、
卵型で先はとがり、基部は心形で長い柄がある。花は朱赤色で中心部は
黄色。花冠は1.5~2cmで、上から見ると五角形。花期:8~10月
生息環境:畑地、樹園地、牧草地、路傍、荒地
英名:Red morning glory, Scarlet morning glory
シノニム:Quamoclit coccinea, Quamoclit angulata
表1:マルバルコウについて

観察記録

マルバルコウの花色は、鮮やかな赤の印象でしたが、記事をまとめるにあたり、近縁種のルコウソウと見比べると、こちらは鮮やかな朱色と言った方が適切なようです。カラーリングもルコウソウが、花弁の中心まで真っ赤なのに対し、マルバルコウは花弁の中心部分と先端がに黄色が入ります。花形もルコウソウは星形ですが、マルバルコウは五角形です。似てる印象だった花についても、見比べると両種は、だいぶ違っていました。

マルバルコウ花1
鮮やかな朱色が目を引くマルバルコウの花、2020/10/25 安城市

次に実の所見です、熟した実は探せませんでしたが、アサガオに似た実がたくさん実っていました。本種は虫媒花との事で、観察時は秋も深まっており、茂みに見かける虫も少ないなか、効率的に結実している様に見受けられました。本種は花数も多く、夏からずっと咲き続けていることを考慮すると、かなりの繁殖力を持っていそうです。

マルバルコウ花2マルバルコウ実
マルバルコウ葉マルバルコウ紅葉
写真左上:真上から見た花→見事な五角形、写真右上:マルバルコウの実、
写真左下:マルバルコウの葉、長い柄の先にハート形に付き光沢がある、写真右下:葉先は尖る。紅葉なのか赤銅色に色付く葉
2020/11/3 安城市

マルバルコウの葉は葉柄が長く、ひらひら風にそよいで、びっしり茂った感じは無いですが、近くで見ると、図鑑の記載通り、先が尖ったハート形の葉が、たくさん付いていました。本種は11月初旬にして、一部に紅葉は入るものの、目立った落葉もなく、青々とした葉を茂らせており、植物本体の生産力も相当高そうです。

考察

以上のような性質と、もともと観賞用に導入された経緯を踏まえると、マルバルコウは、園芸植物として扱って遜色ないように思えます。近縁種のルコウソウは、春先のホームセンター等で、種や苗が売られているのを見かけます。しかし、園芸植物としての、マルバルコウの取り扱いは、廃れてしまいました。実際、自分もこの機会に調べるまで、本種の存在を知りませんでした。その点を疑問に思い、もう少し調べを進めると、以下のような解説が見つかりました。

本種は、国立環境研究所の「侵入生物データベース」にも記載があり、厄介な侵入種としての一面もあるようです(ちなみに本サイトでは、本種の侵入経路・年代、防除方法等についても触れられており、駆除対象の体で書かれた解説が面白いです)確かに一歩引いて、本種の草姿を観察すると、周りの草や構造物に絡みつきながら、畔全体を覆うように広がって繁茂しています。

マルバルコウ群生マルバルコウ壁面群生
写真左:畑の畔の平面部分に群生するマルバルコウ、2020/10/25 安城市、写真右:畔の法面を覆うマルバルコウ、2020/11/3 安城市

また、岡山理科大学生物地球学部の「植物雑学事典」には、梅林の林床や放棄畑を覆いつくす、本種の侵略的な繁茂が目立ってきているとの記載があります。以上より、マルバルコウは、観賞用の園芸植物として扱うには、あまりに性質が荒く、徐々に見放されて野に放たれ、現在の帰化状況に至ったのだと思います。個人的に好きな花なので、ちょっと惜しいですね。

参考文献

  • 「山溪ハンディ図鑑1 野に咲く花」、監修/林 弥栄、写真/平野隆久、山と溪谷社、1989年、185頁
  • 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList),http://ylist.info、2020年11月3日閲覧
  • みんなの趣味の園芸「育て方がわかる植物図鑑」”ルコウソウ“、NHK出版、2020年11月3日閲覧
  • 国立環境研究所「侵入生物データベース」、”マルバルコウ”、2020年11月3日閲覧
  • 波田善夫(1997-)「植物雑学事典」岡山理科大学生物地球学部、“マルバルコウ Ipomoea coccinea”、2020年11月3日閲覧
  • Wikipedia日本語版、”マルバルコウ“、2020年11月3日閲覧

コメント

タイトルとURLをコピーしました