ヘブンリーブルーは、私の大好きなアサガオです。本種は、品種名が「天上の青(Heavenly Blue)」と名乗るだけあり、抜けるように真っ青な花が目を引く美しいアサガオです。近所にも育てていらっしゃる方が多く、去年もたくさん写真に収めることができました。本当に綺麗な花で、以前から紹介したかったので、集めた知見の整理もかね、備忘録として記事にまとめます。
基本情報
学名: | Ipomoea tricolor |
和名: | アメリカソライロアサガオ<亜米利加空色朝顔>、別名:セイヨウアサガオ、ソライロアサガオ |
分類: | ヒルガオ科 サツマイモ属 |
分布: | メキシコ、中央アメリカ、熱帯南アメリカ原産(海外文献にプエルトリコ原産の記載有) |
形態: | つる性の多年草(温帯地域では越冬できない為、一年草扱い)。つるは左巻きで、 アサガオと違い茎には毛はなく、棘がある。周りの構造物によくからみつきながら 旺盛に成長し、長さ2~6mほどになる。葉は互生し、長さ3〜7cmの心形で、先端は急に尖る。 葉にはアサガオ等と異なり毛茸(trichome)がない。蕾は葉腋に数個つき一箇所から5〜6輪の 花が咲く。対して、アサガオの花は一箇所から1輪咲き。花は直径6〜9cmの漏斗形、 通常は青色で中心部は白色だが、他色の品種も幾つか知られている。花の萼は長く伸びる。 花期:夏から晩秋まで咲き続ける。短日植物の為、開花時期が、アサガオ(6月下旬~) より遅く、8月頃から開花が始まる事が多く、11月中旬~霜が降りる頃まで、咲き続ける。 果実は球形の蒴果で、萼の先は、横を向く(アサガオは上向き)。本種は熱帯性で、 温帯域では、咲いた花も途中まで実が膨れて、その後枯れてしまう事が多い。その為、 日本では、アメリカソライロアサガオの種取りは難しい。 |
生息環境: | アメリカソライロアサガオは、風通しと日当たりの良い場所、水持ちと水はけがよく、 肥沃な土壌を好む。本種は丈夫で、痩せ地でもよくでき、肥沃地では葉ばかり茂って 花が咲かなくなる事もある。発芽温度は、25度前後と高く、種まきは充分に気温の 上がった5月上旬~6月上旬頃に行う。 |
英名: | Mexican Morning Glory, Blue Morning Glory, morning-glory |
シノニム: | Ipomoea rubrocaerulea, Pharbitis rubrocaeruleus |
品種名: | Ipomoea purpurea ‘Heavenly Blue’ |
利用: | アメリカソライロアサガオは、生育旺盛で生長が早く、よく茂り広範囲を覆う為、垣根、 日除け、グリーンカーテンに利用される。本種は、アサガオやマルバアサガオに比べ、 園芸品種はかなり少ないが、丈夫で冷涼な気候に耐え、多花性で花も大きく、午後に なっても萎れない等、園芸植物として優れた性質を持ち、欧米でよく栽培される。 本種の種子には幻覚作用があり、幻覚剤として利用されることがある。この幻覚作用は 通常、種子に含まれるエルギン(d-リゼルグ酸アミド、略称:LSA)に起因すると言われる。 幻覚作用帰属の有効性については議論が続いており、リセルグ酸ヒドロキシエチルアミドと エルゴノビンも、いわゆる、サイケデリックスアルカロイド(幻覚作用のある 植物アルカロイド)として寄与していると考えられている。エルギンは米国、規制物質法で、 スケジュールIIIの物質としてリストされているが、植物自体の一部は管理されておらず、 種子や苗は、依然として多くの園芸業者によって販売されている。 |
観察記録
アメリカソライロアサガオは、アサガオ等に比べ園芸品種は少ないそうです。今回主題のヘブンリーブルー(Heavenly Blue)は、青色無地で野生型の園芸品種とされています。幾つか資料を当たりましたが、紹介されている品種は大体一緒で、白花のパーリーゲート(Pearly Gates)、絞り花をつけるフライングソーサー(Flying Saucers)、薄水色に濃い青の筋が入るブルースター(Blue Star)、ピンク色のウェディングベル(Wedding Bells)などがよく知られているようです。他品種も探しましたが、ご近所には、ヘブンリーブルーしかなく、いっぱい撮影したので、気に入った写真を貼っていきます。
ヘブンリーブルーの葉は、心形(ハート形)で、アサガオのような毛は一切無く、表裏共ツルッとしてます(写真2上段左)。茎は褐色無毛、旺盛に伸びて、葉柄の長い葉が多数互生します(写真2下段左)。また、茎には棘がある様ですが、目視で確認できませんでした。蕾は葉腋に複数個付き、長く切れ込んだ萼が蕾に沿って覆ってます(写真2下段右)。花は漏斗状に開き、滅多に結実しないようです。以上、概ね知見通りの形態を観察できましたが、茎の棘については、私が観た限りでは、見つけられませんでした。
ヘブンリーブルーは、旺盛に繁茂する性質から、よく生垣に利用されるようです。以下写真の通り、フェンスによく絡んであたりを覆う葉と、濃い花色と多花性なこともあり、晴天でも薄曇りの日でも、空を背景によく映えて、見事な生垣に仕上がっていました(写真3)。
2020/11/14 安城市 2020/11/22 安城市 2020/11/22 安城市 2020/11/22 安城市
考察
ヘブンリーブルーは、開花中に花色が変化することが知られています(写真4)。本種の花は、蕾の時は赤紫色で、開花すると青色に変わり、数時間後にしぼむとまた赤紫色に、みごとな色変化をみせるそうです。この花の澄み切った空色は、非常に複雑な分子構造を持つ色素、ヘブンリーブルーアントシアニン(HBA)の化学修飾と、開花中にHBAが存在する液胞のpH環境が、酸性からアルカリ性に傾く事象が重なり、発現するそうです。
開花直前の赤紫の蕾 赤くしおれ始めた花と開花中の花 赤紫にしおれた花と色付き始の蕾
この時の液胞内のpHは、pH6.6→pH7.7に大きく変動するとの観察結果が報告されています。pHって、対数スケールなんで、その値が1動くとは、開花してわずか2、3時間の間に、酸性度(水素イオン濃度)が10分の1になる訳で、これは驚きの変化だと思います。ここまで調べて、本種の時間経過に伴う色変化を示せないか、急遽撮り溜めた写真からかき集めてみました(写真5)
2020/11/2 7:41 2020/11/7 11:14 2020/11/14 12:08 2020/11/22 14:32
うーん、確かに午後にかけて、赤みが増すような気がしますが、光線の具合による違いのような気もします。日付も天候も違う訳で、急ごしらえでかき集めた写真を比較しても、言える事は少ないです。今後の課題として、機会を見て写真を取り直して、リライトしたいと思います。
参考文献
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「“Ipomoea tricolor” BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)2021年2月4日閲覧
- “Ipomoea tricolor” National Center for Biotechnology Information (NCBI)(英語)2021年2月4日閲覧
- “Ipomoea tricolor” Encyclopedia of Life (EOL)(英語)2021年2月4日閲覧
- Wikipedia日本語版、”ソライロアサガオ” 2021年2月4日閲覧
- 仁田坂 英二(1998-)「アサガオホームページ」九州大学/NBRP “ソライロアサガオ(Ipomoea tricolor)” 2021年2月4日閲覧
- 渡辺坦(2015-)「植物の名前を探しやすい デジタル植物写真集」 “セイヨウアサガオ” 2021年2月4日閲覧
- ペリプラス株式会社「暮らし〜の」”西洋朝顔(ヘブンリーブルー)の花言葉や育て方を解説!冬越しの仕方は?” 2021年2月4日閲覧
- 片岡静「アサガオの育て方.net」”西洋アサガオ 育て方” 2021年2月4日閲覧
- 吉田久美(1997) JT生命誌研究館、季刊誌「生命誌」通巻16号 “アサガオの花はなぜ青くなるのか?” 2021年2月4日閲覧
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