先月、近くのスーパーへ買い出しに行く途中、アサガオに似た変わった色合いの花を見つけました。すごく綺麗だったので、写真は撮りましたが、はやりの園芸種で、名前もわからないだろうと、放置してました。今更ながら調べたところ、この花は「マルバアサガオ(Ipomoea purpurea)」と言い、古くに渡来した種で、その中でも有名な栽培品種「ミルキーウェイ」とのこと。本種について全く無知だったので、得られた知見を整理し、備忘録として記事にまとめました。
基本情報
学名: | Ipomoea purpurea |
和名: | マルバアサガオ<丸葉朝顔>、別名:メキシコアサガオ |
分類: | ヒルガオ科 サツマイモ属 |
分布: | メキシコから中央アメリカ原産。 移入分布:江戸時代の初期に観賞用として渡来し、暖地を中心に各地に帰化 |
形態: | つる性の一年草。つるは左巻きで、茎は褐色の毛に被われ、周りの構造物に よくからみつきながら成長し、長さ2~3mほどになる。 葉は互生し、長さ3~10cmの心形で、先端は急に尖る。花は直径3〜8cmの漏斗形で、 花色は主に紫色だが、白色や赤紫色、ピンク色等のバリエーションがある。 花期:夏から晩秋まで咲き続ける。果実は扁球形で、下向きに付く特徴あり |
生息環境: | 花色が美しいため、観賞用に庭で栽培される事が多い。こぼれ種から雑草化し、 周囲の路傍や荒地に繁茂することもある。 |
英名: | common morning-glory、tall morning-glory、purple morning glory |
シノニム: | - |
品種名: | Ipomoea purpurea ‘Milky Way’ |
観察記録
一般的にマルバアサガオは、紫色の花を咲かせる株が多いそうです。また本種は、赤やピンク、白等、花色にバリエーションがある事も知られています。実際、今回見つけた栽培品種、ミルキーウェイは、白地に放射状の赤紫斑が、くっきり入る、変わった花色でした。文献に明記は無いですが、現地の花や文献の画像を観察すると、マルバアサガオ全般に、花弁の中心から放射状に5本の斑が入る、特徴があるように見受けられます。
マルバアサガオの葉は、その名前通り、丸っこいハート形をしています(写真2)。アサガオ類の葉について、同属のヒルガオやサツマイモ等の、鉾型と言われるツタの葉に似た形状が、一般的だと固定観念がありました。しかし、普通のアサガオが枯れてくる晩秋の今頃だと、青々とハート型の葉を着ける本種の方が、むしろ主流なのだと思います。
マルバアサガオの特徴として、果実が下向きに実る性質が挙げられます。このことは、複数の文献に、記載がありました。観察したところ、本種は、斜め上向きに開花し、結実すると、果実が熟するにつれて、花柄が開花時と逆向きに曲がる事で、下向きの実りを迎えるようです(写真3)。
2020/11/3 安城市
マルバアサガオのガクについて、アサガオ類のガクは、種類により形が異なるため、種の識別に使われる重要な形態に挙げられています。他のアサガオ類と比較したとき、マルバアサガオのガクは、幅広で短く、先が尖らない特徴を持つようです(写真3)。
とは言え、私にはアサガオ類のガクについて、比較分類できる程、知見がありません。時期的に4種類のアサガオ類しか観察できませんでしたが、急遽、周辺に植栽・自生しているアサガオ類のガクを、撮影してきました(写真4)。マルバアサガオのガクは、以上5種類の間でガクを比較した限り(写真3,4を見比べた中で)では、以下の特徴を持つと思われます。
- 切れ込みが浅く、短く幅広い
- 先端は尖らず、丸みがある
- 毛に覆われる
- 先端は反り返る
考察
マルバアサガオは、江戸時代初期に観賞用として渡来し、各地に野生化しているようです。野田市のサイトには、市内の草花を紹介した、「草花図鑑」と言うコンテンツがあり、こぼれ種から野生化したマルバアサガオが、市内の道端や荒れ地に散見されると、解説があります。また、「物臭狸の『雑草日記』」と言うブログ内に、マルバアサガオの中でも、国道端の植え込みに大繁茂する、野生化したミルキーウェイについて、紹介記事がありました。
しかし、以前に紹介したマルバルコウと違い、本種は、花が大きく美しいカラーリングで、野性味もなく、より園芸種の傾向が強いように思えます。野田市のサイトに紹介されていたような、野生化の傾向が、安城市のマルバアサガオにも見られるのか、調べてみました。まずは、栽培品種のミルキーウェイを見つけた場所の近隣に、他の栽培品種が植栽されていないか、見回りました。近隣に他のマルバアサガオの植栽は、見つかりませんでした。
次に、最初にミルキーウェイを見つけた場所の近隣に、こぼれ種から生育した株がないか探しました。植栽場所の前にある側溝に1株、隣の荒れ地に1株の自生株が見つかりました(写真5)。写真の通り、自生株は、葉も小さくまばらで、栄養状態も悪いように見受けられます。しかし、自生株の花は、栽培株より一回り小さい位で、条件の悪い環境下でも、一定の大きさを確保して咲く様です。
以上より、安城市では、マルバアサガオ(ミルキーウェイ)は、こぼれ種から何株か、自生株が育つ段階のようです。しかし、これら自生株には、勢いが無く、後に野生化し、市内各所に大繁茂する様な、傾向は見られませんでした。
参考文献
- 「山溪ハンディ図鑑1 野に咲く花」、監修/林 弥栄、写真/平野隆久、山と溪谷社、1989年、184頁
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList),http://ylist.info、2020年11月24日閲覧
- 二宮深翠 草花と樹木のデジタル植物園 ”Botanic Garden”、”まるばあさがお (丸葉朝顔)“
- 野田市「草花図鑑」、”マルバアサガオ“、2020年11月24日閲覧
- 「物臭狸の『雑草日記』」、”マルバアサガオ(ミルキーウェイ)“、2020年11月24日閲覧
- Wikipedia英語版、”Ipomoea purpurea“、2020年11月24日閲覧
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